これまでウサギさんの食餌管理を知っていただくために、牧草の大切さ、お野菜の役割、おやつの注意点をテーマにお伝えしました。今回は、ウサギさんの牧草について、もう少し詳しく見てみたいと思いますさて!ウサギさんにとって良い牧草とは何だったでしょう!?
そうです!イネ科の牧草でした!これさえ正解できたらはなまる💮です!
が…イネ科の牧草はウサギさんにとって、本当にバッチリなのか?それを検証するため、日本標準飼料成分表2009年版を元に、牧草の成分表を作成させていただきましたそれを見ながら、着目点を絞って少しずつ一緒に考えてみましょう!
イネ科・マメ科の違い
まずは「イネ科」と「マメ科」の違いに注目!です次の表1「イネ科マメ科の違い」をご覧ください。
ウサギさんのお腹を動かし、腸内の微生物さんを元気にするために大切な「繊維質」はどうでしょう?イネ科は55%!なんと半分以上の割合を繊維質が占めています!一方のマメ科は37%です。よって、繊維質の豊富な「イネ科」が優れています
続いて「タンパク質」をみてみます。タンパク質は、身体をつくる材料や、身体を動かすエネルギーにもなりますつまり、タンパク質の割合が大きいほど、栄養がたっぷりなイメージをしてみてください
マメ科がタンパク質が16%なのに対して、イネ科は8.6%!あれ…?
マメ科がイネ科を上回っている!ということは、イネ科よりも栄養豊富なマメ科を選んだ方が良さそう!…と思ってしまいますが、ちょっと待ってください!実は、ウサギさんにとって理想的なのは、より「低」タンパク質のイネ科なのです!微生物の力を借りて、必要なタンパク質を自らのお腹の中で生み出す仕組みを備えているウサギさん
そのため、そんなにもたくさんのタンパク質を食物から取り入れる必要はありません。それどころか、むしろ過剰なタンパク質は、腸内の微生物の活動を乱し、腸内環境の悪化を招いてしまいます
ちなみに、ウサギさんが口から取り入れる重要なタンパク源といえば、「盲腸便」ですよね!なんと、ウサギさんが摂取するタンパク質の10~20%を担っているそうです!やはり盲腸便は大切な栄養源なのです
最後に比べてみたいのが、「カルシウム」!以前にご紹介した通り、ウサギさんのカルシウム代謝は大事な特徴がありましたウサギさんはカルシウムの吸収が得意(ビタミンDに依存せずに効率よく吸収できる)で、余った分は主に尿から排泄します。そのため、過剰なカルシウムによって石ができてしまうことが…これによって尿が出なくなるのは一大事です!
高カルシウムのフード(乾物重量で4%)を長期間与え続けると、大動脈や腎臓など軟部組織にカルシウムが沈着する恐れがあるという報告もあります
よって、カルシウム量は適度に制限が必要です!さて、イネ科のカルシウムは0.41%、マメ科は1.3%と、イネ科の方がより「低」カルシウム
やはり、カルシウムにおいても、ウサギさんにとって理想的な食餌は「イネ科」の牧草という検証結果となりました!
イネ科の牧草4種の違い
続いて、イネ科の牧草の中での違いがあるか?について検証です次の表2「イネ科の牧草4種の違い」をご覧ください。
ウサギさんのイネ科の牧草としてよく目にする、チモシー、オーチャードグラス、イタリアンライグラス、オーツヘイの4種を比べてみましょう!(先の表の1については、イネ科とマメ科の違いをおおまかに知るため、この4種の平均値を「イネ科の牧草」とさせていただきました。)同様に繊維質から見ていきます。
繊維質が一番少ないのはオーチャードグラス、最も多いのはオーツヘイのようですとはいっても、どの牧草も繊維質の割合はなんと50%越え!半分以上を繊維質が占めていて、どれも優秀です!💮
次にタンパク質はどうでしょう?一番小さいオーツヘイが5.5%なのに対し、最も大きいオーチャードグラスは11%と、種類によるタンパク質の量に違いがあるようです。では、ウサギさんにとって、どのくらいのタンパク質が適正なのでしょうか?…ウサギさんに必要なタンパク質量は、それぞれの成長ステージや健康状態などの違いによって異なってきます。例えば、成長期の子ウサギさんは15~16%、妊娠中や授乳中の母ウサギさんは18%が適切とされています。このように、たくさんの栄養を必要とする時期には、タンパク質も不足しないようにいつもよりもたっぷり摂取する必要があります一方、その他の健康な大人のウサギさんにとっては、どうでしょう?タンパク質が不足してしまうのは心配ですが、先程お伝えした様に、タンパク質が多すぎることで、ウサギさんの腸内環境に悪影響が出てしまうことは予防したい!ですよね…
そこで!イネ科の牧草の出番です!表の中で最も高タンパクなオーチャードグラスでも、タンパク質量はたった11%!つまり、イネ科の牧草であれば、どれを選んでも、適度なタンパク質制限ができるのです
チモシーの刈る時期による違い
最後に、チモシーは刈る時期によって栄養価が違うか、見てみましょう次の表3「チモシーの刈る時期による違い」をご覧ください!(先の表の2については、一番刈りと再生草の平均値を「チモシー」とさせていただきました。)
繊維質、タンパク質、そしてカルシウムの3項目全てにおいて、一番刈りが再生草を上回る結果となっています!しかし、ここまで一緒に検証を進めてこられたみなさんなら、もうウサギさんの牧草の目利きはバッチリではないでしょうか!?
多少の違いはあれど、一番刈り、再生草のどちらも高繊維、低タンパク、低カルシウムと、3点満点の、ウサギさんにとって素晴らしい牧草ですよね!
牧草の成分検証のまとめ
以上3つの着目点(表1〜3)からわかったことは
マメ科の牧草はカルシウム、タンパク質が多い!
イネ科の牧草の栄養価の違いは、マメ科とイネ科の違いほど重大ではない!
チモシーは刈る時期が違っていても、高繊維&低タンパク&低カルシウム!
これで、安心して大切なウサギさんにイネ科の牧草を食べてもらいましょう!
繊維たっぷりの食事ができている何よりの証は、大きなウンチです。毎日、ウサギさん自身が一生懸命教えてくれているのです大きなウンチを見ると、毎日ハッピーな気持ちになりますね!今日もバッチリ、いい調子!💮